「タイトルが安っぽいのが残念です。」

<転記 2009.4.19>

日本人が知らない恐るべき真実 〜マネーがわかれば世界がわかる〜(晋遊舎新書 001)

日本人が知らない恐るべき真実 〜マネーがわかれば世界がわかる〜(晋遊舎新書 001)

社会に出て働いたことのある人なら、多くの人が感じるのではないかと思いますが、なぜこんなにも過剰に働かなければ社会や自分たちの生活を維持できないのか、何かわけもわからず働かされているような感覚に陥ることがあるのではないでしょうか。

結局は、この競争社会の中では厳しい競争に勝ち残るしかしようがないのだといった、諦めにも似た気持ちで毎日を淡々と過ごすことになるのですが、この競争がいったいどこから引き起こされているのか、まともに考えたことはないのではないでしょうか。
実はこれが、お金の根本的な仕組みに原因があるということにほとんどの人が気づかないまま、闇雲に働きながら搾取されているという実態を明らかにするのが本書です。

前作の『金融の仕組みは全部ロスチャイルドが作った』に比べて随分まとまっているし、陰謀色もだいぶ抑えられて、かなり読み易くなっています。
まあ前作は、金融資本主義の形成にまつわるロスチャイルドの果たした役割を明らかにするものでしたし、それに対して本書は、著者のブログの記事をまとめて世に問う的な内容ですので、力点が多少違うものではあります。

その中でまずは、日本の国家財政が破綻状態にある現状をデータを示して解説し、その背景であるグローバリゼーションによる世界的経済格差の拡大の様子を示し、さらに、その仕掛け人である国際金融の支配者たちの素顔をあぶり出します。

そして、そもそもお金とは何であるのかを根本的に問い直し、無から有を作り出す利子のシステムが無理な経済成長を強制し、激しい競争を促していることを示し、作られた富は全て少数の富裕層へ吸い上げられる仕組みになっていることを明らかにします。

最後に、我々庶民がこの搾取のシステムから逃れるための可能性として、忘れられた経済学者シルビオ・ゲゼルの自由貨幣理論による自由経済を基本にした、新しいお金のシステムを提唱します。

これは「弱者が弱者なりに生きていける領域」を作ることであり、金融支配者からの自立を意味します。つまり、今の強者のためのシステムの中では、普通の人々はどれだけ頑張っても足りず、さらに、椅子取りゲームの椅子の奪い合いで、必ずこぼれ落ちる人が出てしまうため、強者とは別の共生のシステムを作ろうということです。

そのキーワードが「地域通貨」であり、その実効性はある程度証明されていますが、どうも現実にうまく行っているところばかりではなさそうです。
しかし、この絶望的な状況の中で、唯一といっていい希望の光のように感じます。

情報の内容自体は、いろんな先駆的方々の主張をまとめたような感じですが、新書という形でとても読みやすくかつ刺激的で、今の私たちが進むべき方向を考えるのに、たいへん参考になる本だと思います。ただ、タイトルがなんかありがちな裏社会本的な題名で、ちょっとインパクトに欠けるのが残念に思います。

経済の素人の私には、この本の内容はとても説得的に思えますが、専門家的にはどのように捉えるのか知りたいところです。あと、個人的には利子が生み出す影響についてもっと知りたいと思いましたし、利子を取らない金融としてイスラム金融がありますが、それとの関係なども知りたいと思いました。

いずれにしても、もっと多くの人に知られてほしい本であることは確かです。

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<一言>
この本も、たいへん興味を抱いた本で、もっと詳しく知りたいと思いました。
おそらく専門家的には、異端というよりは、無視されるような内容なのだと思われます。
それは、現在のシステムの枠外にあるからだと思いますが、うまく説明できません。
その辺をもっとわかるようになりたいと思っています。