「今こそ読むべき本だと思います。」

<転記 2009.4.26>

エンデの遺言「根源からお金を問うこと」

エンデの遺言「根源からお金を問うこと」

前からずっと読みたいと思っていたのですが、最近『日本人が知らない驚くべき真実』を読んで、ようやく読んでみようと思い立ちました。
読んでみて驚いたのは、もう10年ほど前の本になるのに、全く古びていないということです。というより、まさに今こそ必要な本なのではないかと思います。

この本の基になった、NHKの番組自体は観ていないのですが、この本は作家エンデが、お金というものに対する根本的な問いを、つきつめて思索した内容が紹介されており、お金とは本来どうあるべきかを問い直す、とても有意義な取り組みだと思います。
エンデといえば『モモ』で、私もとても好きな作品ですが、時間に追われて生きる現代文明を批判的に見る作品という認識はありましたが、これが、現代のお金のシステムを意識したものであるとは思いませんでした。

この本では、エンデの思索に影響を与えた4人の人物を取り上げています。

スイスの経済学者ヴィンスワンガーは、現代の無限に成長する経済モデルは、お金がお金を生み出す錬金術の思想であり、未来を食い潰す経済システムであると指摘します。

建築家のマルグリッド・ケネディは、現在のお金のシステムが、どんな災害や戦争よりも多くの死と貧困をもたらしていることを指摘し、それを変えるためには、システムの変革のみならず、我々の意識の変革が不可欠であることを訴えます。

また、思想家ルドルフ・シュタイナーは、友愛による経済を主張し、本来資本は金儲けのためでなく、広く社会に資するために投資されるべきであることを主張します。

そして、忘れ去られた思想家シルビオ・ゲゼルは、資本主義でも共産主義でもない、減価する通貨による自然的経済秩序を提唱します。
正直言って、私にはこの新しい経済システムの全容がよく掴めず、なんだかよさそうだけどよくわからない、というのが本音です。

実際にどのような効果があるのか、第一次大戦後のドイツで政府の政策として、実施される寸前まで行きながら、政治闘争に巻き込まれて、ご破算になってしまったいうのは非常に残念です。ただ、彼の思想に基づく貨幣システムが、地域通貨として、世界各地で成功を収めているというのは嬉しいことです。

あのケインズも、ゲゼルを高く評価していたということであり、なぜこの思想が禁止されたのかも含めて、今一度ゲゼルの思想を再考する必要があるように思えます。

このような思想を踏まえて、エンデが主張することは単純で、非良心的である方がより高い報酬を受け、良心的であるほどに経済的に報われない、現在の貨幣システムを見直すということです。

その一つの手段として地域通貨があるわけですが、経済的危機にある現在こそ、この制度は有効と思われ、もっと本格的に実施されてもよさそうな気がします。

実際日本でも多くの地域通貨が実践されているようですが、そのような現状も踏まえ、現在このエンデの主張がどのような展開を見せているのか、続編といえる番組および本の作成を是非期待します。

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<一言>
これは、かなりいい本だと思います。
この方向での展開がかなり気になりますが、ちゃんと調べていないこともあって、よくわかっていません。
2002に、本書の続編ともいえる、地域通貨の実体を紹介した本が出ていますが、実際はそちらを先に読みました。
それも踏まえて、現状の展開と評価を知りたいと思いますが、今のところ調査不足です。