「ハイエクって誰?」
<転記 2009.5.10>
- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/08/19
- メディア: 新書
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最近ハイエクという名前をよく耳にしますが、自由主義経済を主張した経済学者ということぐらいしか知らず、どういう人なのかよくわかりません。
そこで、とりあえずどんな人かを知ろうと思ってこの本を読んでみました。
読んでみて思ったのは、やっぱりよくわからないということでした。
どうもその人となりというか、具体的なイメージが浮かんできません。
とりあえず一般的なハイエクのイメージとしては、
強力な市場主義者で反社会主義者であり、
ケインズと論争を繰り広げ、当時は敗北してしまったが、
後にイギリスのサッチャー首相が彼の本を重用したり、
ノーベル経済学賞を受賞したりとハイエクは時代の主流となり、
その後のグローバル資本主義への流れに先鞭をつけた人という感じです。
ハイエクの思想の根底には不確実性というものがあり、将来の市場の動向は予想できないため、政府が余計な介入をして市場を混乱させることはやめて、市場の調整機能に任せるべきだと主張しているようです。
完全な知識に基づく完全な市場などありえないと説き、計画経済を否定し、全てをコントロールできるという官僚の思い上がりを徹底的に批判します。
各個人が断片的な知識を持って行動すると、あたかも社会が一つの計画に従うような現象を、「社会的な心」として市場のメカニズムを捉えるのは、アダム・スミスと同様の考えのようです。
ハイエクは、このような「知識の分業」という、今日のネットワーク社会を予見したような考えを提示しており、現代における知的所有権の問題などに対しても参考になる部分が多いようです。
私の印象としては、ハイエクの思想はアダム・スミスの思想の現代的展開という感じに思えますが、どうなのでしょうか。
この本では、多数の学者や思想家の名前が出てき、多種多様な概念にも触れていますが、知らない人にはちょっとついていけないのではないかと思います。
文体は平易ですが、内容はそんなにすんなりとは理解できませんでした。
たぶんこの本は、ハイエクについての入門書というよりは、ある程度の知識のある人が、全体の中でのハイエクの位置づけを認識するための、手がかりとなるような類の本ではないかと思いました。
元々この本は、ハイエクの本を紹介する目的で書き始めたものが、どんどん内容が膨らんでいったということのようですが、ハイエクの実像を掴むには、紹介されているハイエクの著書を読むか、他のハイエク解説本などを読むなりする必要があるように思います。
著者の言うように、ハイエクの現代的意味を考えるための一助となる本なのではないかと思います。
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<一言>
他の本を読んでいないので、ハイエクについてはまだよく分かっていません。
自由主義経済の推進者として批判されることも多いようですが、恐らくそんなに単純な話ではないのだと思われます。
しかし、やはりこの本でわかることには限りがあります。