「陰謀論ではありません。」

<転記 2009.6.21>

資本主義崩壊の首謀者たち (集英社新書)

資本主義崩壊の首謀者たち (集英社新書)

広瀬さんの本を読むのは、『東京に原発を』以来となります。

この人は、表に出ない真実の探求者として、最近はアメリカの権力構造を、様々な人脈を調査し解明しているとのことですが、このような情報に触れると、大手メディアで報じられる情報が、いかに表面的で内容の薄いものであるかを改めて感じさせられます。

別のメディアで広瀬さんが自分の方針を、裏の取れないものはどんな情報でも絶対に掲載することはしない、と語っておられたことからも、いかに事実に基づいた厳密な調査を行っているかという、真摯な姿勢が見受けられます。

それにしても、やはりユダヤ人ネットワークによる金融支配ということなのかという、ある意味いつもの話的な展開なのですが、もはや世界的金融カルテルが存在することは当然のことであり、そこに歴史的経緯からユダヤ人が絡んでくることも何の不思議もないように思われます。

しかし、アメリカの高官の人脈を詳細に辿っていくと、明確なネットワークが浮かび上がり、しかも世界に大きな影響を及ぼす、かなり重要なポストにいる人物が強く結びついているとなると、陰謀論とまではいきませんが、世界を動かし混乱へと陥れている勢力の存在を無視して、これからの資本主義社会を考えることはできないと思われます。

世界的に期待を集めているオバマ大統領の周りにも、このような勢力が相も変わらず居座って、しかも重要なポストについているという事実からも、表面的にはともかく、その実質は今までとなんら変わらないという意見も、その通りなのだと思われます。

しかし、現実的に考えると、それほどの巨大な権力を持った勢力がそう簡単に排除できるわけもなく、オバマ氏がどこまでその勢力にコミットしているのかはわかりませんが、その勢力を政権内に組み入れることは、ある意味仕方のないことのように思えます。

もし期待できるとするならば、オバマ氏が国民的人気を維持し、それを利用することで、ある程度方向性を変えられるのではないか、ということだと思います。

それに、本書でも多数掲載されている、アメリカ大手新聞の一コマ漫画に示されているように、アメリカ社会では金融を操っているその勢力の実体が、相当適確に把握されているようであり、全く知らないうちに支配されているというわけではなさそうです。

しかし、現在の金融の仕組みを作ったのは、このような巨大な権力者たちかもしれませんが、それに乗せられ踊った企業や一般人も多かったわけで、高利回りの運用益を要求する年金基金や、利益を求めて激しく売り買いを繰返す個人投資家、高い配当を求める株主などなど、直接的に利害を共にする勢力が、このような金融拡大政策を強く後押ししていることも間違いありません。

特にアメリカでは、退職者年金の運用の規模は膨大であるため、その運用益を高めようとする力は半端ではありません。それゆえに、例えメディアがその危険な構造をどれだけ指摘しても、多額のお金を生み出す構造自体には大きな影響もなく、政権内部でもその地位を確保し続けられるのではないかと想像します。

問題は日本の対応であり、これまでのように、このアメリカの貪欲な集金システムにいいように利用され、日本の資本を吸収され続けられるままなのか、そこから抜け出すのか、その転換点にきていることは間違いないと思われます。

著者も明確な処方箋を示しているわけではありませんが、このままでは間違いなく日本が危機的状況に追い込まれるであろうことは明白であり、アメリカの言いなりにお金を出し続けることは、なんとしても止めなければならないと主張しています。

しかし、日本では政治の実態がかなり深刻な危機状態にあり、あまりにも硬直化した政治システムによる弊害は、国民に大きな負担を強いる結果になっています。

著者の主張は、これまでのように輸出に頼りすぎることなく、まずは身の回りの生活をきちんと維持できるような、安易なグローバリズムに乗らない、地に足の着いた経済への転換を図るべきというものです。

多くの人が同様の主張をしていますが、あまりに問題は多く複雑であり、情報も多種多様で何が正しいのか判断は困難です。
まずは、一人ひとりが適確な情報を知り、真剣に考えなければならないのだと思われます。

本書は、現在の世界金融において何が起きているのかを、一歩踏み込んだ視点で考察するための一つの手がかりとなる、基本的な認識のための本だと思います。

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<一言>
こういう本も読まないと、表の情報だけでは見えてこないものもあります。
しかし、まさかAmazonの方でコメントが付いているとは思いませんでした。
あり難いことです。まあ、これだけですけど。
独りよがりの文章なので、もう少し読み手のことも考えた文章にした方がいいかもと思いました。